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Logistics Architecture -物流が都市と建築を変えていく-(9)

Logistics Architecture研究会第9回フォーラムは武井紀子氏(弘前大学准教授)とカズ・ヨネダ氏(Bureau0–1代表)が登壇した。

それぞれのテーマは「古代倉庫と国家支配構造」と「変わりゆく物流と試作的な未来」だった。

武井氏は倉庫が歴史の中でどのような位置づけにあったか、古代を中心に国家が全国的な物流をどのようにつくりあげていったかという観点から次のような概略の講演をした。

古代では倉庫に関する倉庫令によってクラ(倉、庫、蔵など収納物によって異なる漢字をあてていた)の管理が国家にとって重要な位置づけを与えられていた。都ではクラは政治を行う宮城とは別の区画で設置されていた。クラの防火や出入りは厳密であり、警護が行われていた。クラには全国から集めた税(調、庸など)が入っていた。クラは税を再配分することによって官僚制(国家の体制)をつくるための中核施設だった。
現在の都道府県の政庁所在地にあたる国府などにもクラは置かれており、庁とクラの設置場所を分けて、国家の支配の元で厳密に管理されていた。そして都の命令を地方に伝えるために、また地方の様々なものを都に集めるために全国を7つのブロックに分けてそれぞれ道路がつくられた。道路は支配の象徴だった。その交通の拠点にもクラは置かれていた。内水面と陸上交通、水上交通と海上交通の接点に物流のクラが置かれていた。
なぜクラは支配と結びついていくのか。神社建築と倉庫建築は類似するところがある。神話ではクラを通じて神様とやりとりがあり、農業でもクラは重要な役割を果たしており、祭事とクラは密接に結びついていた。これらは古代の支配の原初的な在り方であり、クラには精神性とのつながりがあった。

ヨネダ氏は千葉県市川市の倉庫街にある大和ハウス工業の物流施設ブランドDPL(ディープロジェクト・ロジスティクス)のショールーム「インテリジェント・ロジスティクス・センター・プロト」のプロジェクトについて次のような概略の講演をした。

プロトは5階建てでワンフロア1万㎡もある巨大な物流倉庫のなかでロボティクスを活用した研究開発を行うため施設である。
日本は人口減少しているが、消費量は伸びている。物流もeコマースなどを中心に伸びている。その物流の世界において、人間とロボットの協働が新しい物流の現場を引っ張り、人間とロボットが働く空間が一緒になっていく過程の状況を見せている。
また自立型協働ロボットの総合デザイン監修とリブランディングも行っており、人間とロボットがペアを組むことによっていままでにない関係性や生産性が可能になる相互作用を創発するようなロボティクスを目指している。

ふたりの講演から次のようなことを思った。
歴史から変化しないものごとと変化したものごとがわかる。
物流はいつの時代でも必要である。新型コロナウイルスのパンデミックで物流は医療などとともに生活に不可欠であると改めて認識された。eコマースは当面はさらに伸びるだろう。グローバル化を背景にしたサプライチェーンは見直されるだろう。物流に新たな変化が起き、それによって建築と都市も変わっていく。

中崎 隆司(建築ジャーナリスト・生活環境プロデューサー)

武井紀子(弘前大学 准教授):
1981年東京都生まれ。2010年に東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員(PD)などを経て現在、弘前大学人文社会科学部准教授。専門は、日本古代史。

カズ・ヨネダ(Bureau0-1株式会社 代表取締役 ):
ワシントン生まれ、カリフォルニア育ち。2007年にコーネル大学建築学科卒業後、2007年~09年藤本壮介建築設計事務所にて従事。2011年ハーバード大学デザイン大学院GSD建築学科修士M.Arch2課程修了。2011年にハーバードから派遣され、伊東豊雄ハーバード東京スタジオを発足。2011年からTakramのアートや空間デザインのアソシエイトディレクターを経て、2014年にbureau0-1を開始。2018年にはBureau0-1株式会社へ変化を遂げた。

中崎隆司(建築ジャーナリスト&生活環境プロデューサー):
生活環境の成熟化をテーマに都市と建築を対象にした取材・執筆ならびに、展覧会、フォーラム、研究会、商品開発などの企画をしている。著書に『建築の幸せ』『ゆるやかにつながる社会-建築家31人にみる新しい空間の様相―』『なぜ無責任な建築と都市をつくる社会が続くのか』『半径一時間以内のまち作事』などがある。

20.06.03

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