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芝浦地区に倉庫リノベーションで共創のワークプレイスを

注目が高まっている倉庫リノベーションの用途がワークプレイスである。
倉庫リノベーション研究会は第3回のトークイベントのゲスト講師として一般社団法人ニューオフィス推進協会会長の三栖邦博氏を招いた。

ニューオフィス推進協会は日本経済新聞社と共催の日経ニューオフィス賞の授与やクリエイティブ・オフィス推進事業などを行っている団体だ。

講演で三栖氏は「オフィスづくりは経営そのもの」になってきたと指摘し、次のように説明した。
高品質化や多様化、個性化が進展し、企業だけでなく自治体や団体、教育施設、医療施設などにも波及している。
経営資源として認識され、経営目標の実現や経営課題の解決、社員の意識改革の手段、経営理念(価値観、企業文化、企業風土)の可視化など、オフィスは社会や顧客、社員への発信の場になっている。

また次のようなことを語った。
社会の成熟化や価値観の多様化、グローバル化が進んでおり、新しい価値を生み出す場としてのオフィスを求めている。
「快適かつ機能的」から「感性を刺激し創造性を高める」という変化が見られ、オフィスを組織的知識創造の「場」と捉え、経営とオフィス空間を融合させている。
そのような状況から生まれた概念が「クリエイティブ・オフィス」であり、その実践によってコミュニケーションの活性化が促され、知識の融合が新しい知識を生まれる。さらにモチベーション(貢献、参加、達成意欲)が向上し、組織の目標や道筋が共有され、組織の一体感が醸成される。

そして三栖氏はクリエイティブ・オフィスの視点から芝浦地区と倉庫リノベーションについて次のように話した。
芝浦はポテンシャルの高い立地であり、湾岸や職住近接などの特徴がある。倉庫はベースビルディングとしての魅力や優位性として、天井の高い大空間とスケルトンの強度のゆとりがあり、素地としてのつくりこみや演出の自由度などDIYのスピリットの受け入れやすさがある。

「オフィスづくりは経営そのものになってきた」と「組織的知識創造の場」という言葉に注目したい。
組織的知識創造の場は共創の場と表現される。経営は経営者のリーダーシップの現象であり、組織的知識創造のリーダーシップで重要なポイントはフォロワーシップである。共創の場のデザインはフォロワーシップがカギを握っているのだ。

リーダーシップは目的達成のためにつくられた集団の中のリーダーとフォロワーの協力の関係性と意識の相互作用、つまりコミュニケーションから生まれてくる。フォロワーシップはフォロワーが目的達成のためにリーダーが示したビジョンと課題設定を共有するとともに、その指示に従い、補佐していく能力だ。また能力だけではなく積極性や自立性という姿勢も期待されている。

ワークプレイス(オフィスよりワークプレイスの方がしっくりするように感じている)にはコミュニケーションの活性化とモティベーションの向上を促すデザインが求められているのだ。

そのようなデザインのワークプレイスを芝浦地区の倉庫リノベーションで実現したいと考えている。

中﨑 隆司(建築ジャーナリスト・生活環境プロデューサー)

三栖邦博(みす くにひろ)
一級建築士、APEC Architect、シンガポール国登録建築家
現在、ニューオフィス推進協会会長、日本建築士事務所協会連合会名誉会長など
1941年横浜市生まれ。東京工業大学建築学科卒(1963年)、イリノイ工科大学(米国シカゴ市)大学院建築学科卒(1966年)、Skidmore,Owings & Merrill,Chicago建築設計事務所勤務の後、日建設計工務(現・日建設計)入社(1968年)、取締役国際事務所長、代表取締役社長、会長、顧問などを歴任後2012年退社。この間、日本IBM本社ビル、伊藤忠商事本社ビル、日本電気本社ビル、中国国際貿易センター(北京)、イスラム開発銀行本部ビル(ジェッダ)、在インド日本大使公邸(ニューデリー)など国内外の建築設計を担当。
東京工業大学非常勤講師、国土交通省社会資本整備審議会委員、同中央建築士審査会委員などの公職を歴任、2009年国土交通大臣表彰、2011年藍綬褒章受章。
著書に『オフィスルネッサンス』(共著、彰国社)、『超高層事務所ビル』(共著、市ケ谷出版)、『日本IBM本社ビル1971-2009』(共著、新建築社)ほか。

中﨑隆司(なかさき たかし)
建築ジャーナリスト・生活環境プロデューサー
1952年福岡県生まれ。法政大学社会学部社会学科卒業。生活環境(パッケージデザインから建築、まちづくり、都市計画まで)に関するプロジェクトの調査、企画、計画、設計などを総合的にプロデュースすること、建築・都市をテーマとした取材・執筆を職業としている。著書に『建築の幸せ』(ラトルズ)、『ゆるやかにつながる社会 建築家31人にみる新しい空間の様相』(日刊建設通信新聞社)、『なぜ無責任な建築と都市をつくる社会が続くのか』(彰国社)、『半径一時間以内のまち作事』 (彰国社)ほか。

14.10.01

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