オルタナティブなワークプレイスが求められている
倉庫リノベーション研究会のトークイベントの経営者シリーズ第2弾は、プラスファニチャーカンパニー・プレジデントの北尾知道氏を講師に招いた。
北尾氏は流通・サービス業からコンテンツ産業、製造販売業までと幅広い経験があり、常にマーケティングに基づく付加価値創造を目指してきているという。その視点からオフィス家具業界についての講演である。
オフィス家具業界は厳しい状況にある。次がその主な要因だ。人口減少などでマーケットは縮小している。メーカーの数が多く、メーカー間の格差が拡大している。インテリア家具業界からオフィス家具市場の浸食が始まっている。
プラス要因は新しいワークスタイルが生まれていることやベンチャー企業が増えており、ナレッジワーカーが注目される時代になっている。
新しいワークスタイルとはテレワーク、パラレルキャリア、ノマドワークなどである。ワークスタイルとワークプレイスは相関関係にあり、新たなワークスタイルに対応した新たなワークプレイスが出現している。サテライトオフィス、コワーキングスペース、サービスオフィスなどの登場であり、ファーストプレイス、セカンドプレイス、サードプレイスが用意され、様々な場所で仕事ができるようになっている。
ナレッジワーカーなど非定住型ワークスタイルのワーカーには個人、共用、グループワークに対して様々なツールとサービスが提供され、ワークプレイスの中の個人のスペースが減り、共用スペースやインタラクションエリアの比率が増えている。
そのような状況の中、プラスファニチャーカンパニーは様々な新規事業を試み、事業拡大を図っている。そのひとつとして「5TSUBO CAFE」を提案している。ワークプレイス内の小さなスペースを活用した雑談を促すカフェの提案であり、ストレスの軽減、作業効率のアップ、新しいアイデアの創出、コミュニケーションの誘発などが期待されている効果だ。
以上が北尾氏の講演の要旨であり、新たなワークスタイルに対応するオルタナティブなワークプレイスづくりが求められていることがわかる。
2015年4月に倉庫リノベーション研究会は展覧会&フォーラム「MAKE ALTERNATIVE TOWN」を実施した。その第2弾は「MAKE ALTERNATIVE SPACE」とタイトルを変え、新たな倉庫リノベーションの提案を行う予定だ。その提案のひとつが「フォローワーシップ・デザイン・ワークプレイス」である。
知識創造型のワークスタイルを実現するにはワーカーの多様な価値観を尊重し、活性化することが求められている。そのための空間はワーカー相互間のフォロワーシップを活性化するためのデザインを施したワークプレイスではないか。また柔軟性や汎用性を考慮したワークプレイスではないか。
「フォローワーシップ・デザイン・ワークプレイス」はこのような問題意識から考えたテーマである。
2016年10月の展覧会&フォーラム「MAKE ALTERNATIVE SPACE」では、このテーマに対して若手の3組の建築ユニットが3つの具体的な倉庫を題材にオルタナティブな空間を提案する予定だ。
中崎 隆司(建築ジャーナリスト&生活環境プロデューサー)
北尾 知道(きたお ともみち)
プラス株式会社 常務取締役ファニチャーカンパニープレジデント
1958年生まれ。東京大学大学院修士課程修了。セゾングループに21年、KADOKAWAグループに7年在籍後、2012年よりプラス株式会社在籍、2013年取締役ファニチャーカンパニープレジデントに就任、2016年常務取締役ファニチャーカンパニープレジデントに就任、現在に至る。流通・サービス業、コンテンツ産業、製造販売業と幅広く経験するが、常にマーケティングに基づく付加価値創造を目指してきた。
中﨑 隆司(なかさき たかし)
建築ジャーナリスト・生活環境プロデューサー
1952年福岡県生まれ。法政大学社会学部社会学科卒業。生活環境(パッケージデザインから建築、まちづくり、都市計画まで)に関するプロジェクトの調査、企画、計画、設計などを総合的にプロデュースすること、建築・都市をテーマとした取材・執筆を職業としている。著書に『建築の幸せ』(ラトルズ)、『ゆるやかにつながる社会 建築家31人にみる新しい空間の様相』(日刊建設通信新聞社)、『なぜ無責任な建築と都市をつくる社会が続くのか』(彰国社)『半径一時間以内のまち作事』 (彰国社)ほか。
16.07.01