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Logistics Architecture -物流が都市と建築を変えていく-(2)

物流が建築、都市を変えていく。物流にAI、IoT、ロボット、自動運転などが導入され始めている。物流の効率化の新たなシステムの構築が行われようとしているのだ。この新たなシステムの構築が物流施設、さらに建築や都市にどのような変化を与えるのか。

Logistic(物流)とは辞書によると「生産者から消費者までの生産物の移動。包装・輸送・保管・荷役・情報などの活動を包括する」という意味である。

Architectureとは設計思想に基づいて構築されたシステムの構造であり、建築に限定されて使用されることもある。

Logistics Architectureという概念で物流システムの構造と物流建築の2つの意味を持たせることができないかと考えた

2018年5月31日に開催した第2回のフォーラムでは矢野裕児氏(流通経済大学教授)と宮田啓友氏(GROUND株式会社代表取締役社長)を招き、議論した。
それぞれの講演を要約すると次のようになる。

・矢野氏の講演「企業ロジスティクスの未来」の要約
現在の物流は次のような状況にあり、再構築の段階にある。
・従来の物流サービスはトラック輸送比率が高い。
・時間指定などの厳しいサービス水準や非効率な要求にも対応し、安い運賃で提供している。
・いつでも輸送手段を確保できる。・生産性が低い。・情報化が非常に遅れている。・輸送にとても負荷がかかった、あるいは輸送サービスに負荷を押し付けていた状態である。・このような状態が大きく崩れつつあり、限界に来ている。・ドライバー不足が最も深刻であり、確実にこの問題は長期化する。
今後の物流は次のようになる。
・ネット販売の視点(オムニチャネルへの対応)が取り入れられる。
・物流の効率化(共同化。情報共有の進展)が進む。
・IoTによって第4次産業革命(先を読んだ細かいニーズに対応した商品供給。サプライチェーン全体の情報の共有化。バリューチェーンへの転換)が起こる。
・物流産業は労働集約型産業から装置型産業へ転換する。
・物流拠点(輸送コストの比重の増大。物流拠点の分散化。TC(通過型物流センター)からDC(在庫型物流センター)への転換。機械化の進展)が再構築される。
・リスク対応(復元力のあるシステム)が考慮される。
・中長距離輸送の輸送機関(フェリー、RORO船、鉄道貨物輸送によるネットワーク構築)が見直される。
ロジスティクスが建築や都市を変えていくには違うものと融合しながら価値をつけていくしかないのではないか。

・宮田氏の講演「プラットフォーム化する世界と物流」の要約
基幹産業はプラットフォーム化しており、その波は物流にもやってくる。プラットフォーマーとしての成功のポイントは、共有や取引を行うために簡単にプラットフォームに誘導できるか、リソースの提供者と利用者に魅力的なものを提供できるか、ものやサービス、金銭との交換の価値創造の機能の更新と継続ができるか、である。

需給が読みにくいeコマースの成長で物流インフラの裏側はきしみ始めており、もはや人海戦術では対応できなくなっている。物流のIoT化によって物流産業は労働集約型産業から装置型産業への流れは加速化される。装置産業化によるプラットフォーム化も進む。

物流産業が労働集約型産業から装置型産業へ転換するためには人のオペレーションを極力は排除しなければならない。

莫大な設備投資と最先端の技術を取り込んでソリューションしていくのは1企業では難しくなっている。物流機能を持っている物流事業者とテクノロジー企業が連携し、陣営化が加速する。

物流施設とそれを利用するeコマース事業者などが出荷のための保管・配送を自社で行うのではなく、拠点の検討、配置、物流のオペレーション、ラストワンマイルの配送の手配までをひとつのソリーションとして、AIを活用したマッチングビジネス(物流代行サービス)をしているプラットフォームの事業者が生まれている。

物流資産は流動化が進んでいる。マーケットに応じて有休資産を活用しながら物流オペレーションはネットワーク化されていく。

GROUNDは自動搬送ロボットのソフトウエア開発をしている。物流施設のオペレーションと配送領域を対象に、自動搬送ロボットのオペレーション・システムの提供と外部のリソースを活用、シェアリングし、オープン型のプラットフォームを形成することを目指している。

筆者は次のように考えた。

物流産業は労働集約型産業から装置型産業へ転換し、マテリアルハンドリング装置はAI(予測)、IoT(相互制御)、ロボット(省人化・無人化)、自動運転(省人化・無人化)などによって高度化していく。

多くのプラットフォーマーは既存のシステムを活用して利益を生み出すビジネスだ。プラットフォーマーが巨大化するにしたがい、既存のシステムは疲弊(例:運送業)し、また既存のシステムとの軋轢(例:タクシー業や旅館業)が生まれている。これを繰り返してはならない。

Logisticsの課題のひとつである運送の変革は渋滞と既存のインフラ(道路、橋、トンネルなど)が障害となるだろう。

物流のプラットフォームはLogistics Architecture(システムの構造)のひとつである。Logistics Architecture(システムの構造)全体は集約化とオープン化、グロバリゼーションとローカライゼーションがクロスしたなかでは構築されていくだろう。
    
建築は複合化の流れにある。Logistics Architecture(建築)はLogistics Architecture(システムの構造)の変革の過程のなかから、異なる分野の建築との複合化によって生まれてくるだろう。

中崎 隆司(建築ジャーナリスト・生活環境プロデューサー)

矢野裕児(流通経済大学流通情報学部大学院物流情報学研究科 教授):
1957年生まれ。横浜国立大学工学部卒業。 日本大学大学院理工学研究科博士期課程修了。 日通総合研究所、富士総合研究所、流通経済大学助教授を経て、 流通経済大学流通情報学部教授。 他に中央大学および日本大学講師。工学博士。 専門:ロジスティクス、物流、流通、都市計画。

宮田啓友(GROUND株式会社 代表取締役社長):
上智大学法学部卒業。1996年に株式会社三和銀行入行。2000年デトイトトーマツコンサルティング(現:アビームコンサルティング)入社。大手流通業を中心にロヅスティクス・サプライチェーン改革のプロジェクトに従事。2004年アスクル株式会社入社。ロジスティクス部門長として日本国内の物流センターの運営を行う。2007年楽天株式会社入社。物流事業準備室長を経て2008年物流事業長就任。2010年楽天物流株式会社設立、代表取締役社長就任。2012年楽天株式会社執行役員物流事業長就任。同年フランスのフルフイルメントプロバイダーAlpha Direct Services SASを買収、マネージングディレクター兼務。2013年アメリカのフルフイルメントプロバイダーWebgistixを買収。2015年4月GROUND株式会社設立。

中﨑隆司(建築ジャーナリスト・生活環境プロデューサー):
1952年福岡県生まれ。法政大学社会学部社会学科卒業。生活環境(パッケージデザインから建築、まちづくり、都市計画まで)に関するプロジェクトの調査、企画、計画、設計などを総合的にプロデュースすること、建築・都市をテーマとした取材・執筆を職業としている。著書に『建築の幸せ』(ラトルズ)、『ゆるやかにつながる社会 建築家31人にみる新しい空間の様相』(日刊建設通信新聞社)、『なぜ無責任な建築と都市をつくる社会が続くのか』(彰国社)『半径一時間以内のまち作事』 (彰国社)ほか。

18.07.01

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